「イギリス史10講」
新緑の季節になり、散歩の足は自然に森の公園に向かいます。
一昨日はカメラ持参で行ってみて、何枚か写真を撮りましたが、その1枚、イングリッシュ・オーク、ヨーロッパナラの若葉を写してみました。以前に書いたようにこの公園にあった大木は枯れてしまったのですが、ドングリから育てた幼木が植えられていてだんだんと大きくなっています。
最近、近くの図書館から近藤和彦著「イギリス史10講」、岩波新書、2013年刊、を借りて読みました。固い題ですが、内容はおもしろいと思ったので紹介したいと思います。
この本の特長は、イギリス史と世界史、特に対岸のヨーロッパの歴史との関連を重視していることです。また、長らく定説となっていた見方とは異なる新しい解釈を紹介しています。
特に興味深かったのは、「I 論争的な17世紀」という節から始まる「第5講 二つの国制革命」(p. 113-)でした。
1649年に国王チャールズ1世が処刑されてオリバー・クロムウェルを護国卿とする共和国ができ、1660年に王政復古があってチャールズ2世が王位につきます。
しかし、チャールズ2世の弟のジェイムズ2世がその後を継ぐと、1688-89年に無血の「名誉革命」がおき、カトリックだったジェイムズ2世は王位から追われ、チャールズ2世の妹の子、オランダのオラニエ公ウィレム3世(ウィリアム3世)とジェイムズ2世の王女であったメアリ2世の夫妻が共同君主となって迎えられました。
本によると、「名誉革命」(グローリアス・レボリューション)を美化する史観は19世紀の自由主義者によって形づくられたもので、これを普及させた党派の名から「ホウィグ史観」と渾名されているそうです。
現実は、議会勢力や国教会がプロテスタントのオラニエ公と組んでジェイムズ2世を追い出したクーデタだったそうです。
また、当時、フランスのルイ14世の拡張主義に圧迫されたオランダは同盟国を求めていて、イギリスからの働きかけは渡りに船で、クーデタ実行のためにオランダ軍がイギリスに上陸しています。
この勢力争いを反映して、1688年には「9年戦争」、「大同盟戦争」、「ファルツ継承戦争」といくつも名前のあるヨーロッパを2分する戦争がおき、アイルランドやスコットランドでは流血の抗争がおきていて、無血なのはイングランドだけだったとのことです。
ところで、17世紀、18世紀は北アメリカにイギリスの植民地ができ、徐々に成長、成熟していく時期でした。1年以上前ですが、2014年12月29日の「ヴァージニア州」という記事で、アメリカの州の名前のいくつかはイギリスの王や女王、王妃にちなんで名づけられたことを書きました。
http://nb20oi12-7388tu.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/virginia-59ab.html
この本を読んで、州名のもとになった王などがどのような立場であったのかが分かり、興味深く感じました。
ここにもう一度コピーして、若干注記してみます(ヴァージニアを除く)。
・MD メリーランド:アンリエット・マリ Henrietta Maria王妃(国王チャールズ1世(在位1625-1649)の妃)
(注: 王妃はフランスのアンリ4世の娘でルイ13世の妹。チャールズ1世は狭量で議会などと対立し統治に失敗したが、王妃との私生活は親密だった。)
・NC, SC ノース・カロライナ、サウス・カロライナ: チャールズ2世が父チャールズ1世にちなんで名付けた。カルロスは、チャールズのラテン名。
(注: 1660年の王政復古で王位についたチャールズ2世は法制的には1649年に即位したこととされ、チャールズ1世は殉教者として聖人とされた。)
・GA ジョージア: ジョージ2世(在位1727-1760)
(注: ウィリアム3世=メアリ2世には嫡子がなく、メアリ2世の妹アン女王でスチュアート朝は絶え、1714年にジェイムズ1世(在位1603-25)の女系の曽孫、ドイツのハノーファ選帝侯ゲオルク・ルートヴィッヒがジョージ1世として迎えられてハノーヴァー朝がはじまり、ジョージ2世はその2代目)
・LA ルイジアナ: フランス国王ルイ14世(在位1643-1715)
(注: 18世紀まではフランス領であったがナポレオンのときにアメリカが買い取った。)
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