「俘虜記」 "Taken Captive"
先週、本棚を整理していたら、大岡昇平著「俘虜記」が出てきました。付箋がひとつ付いていたので、開いてみると、新潮文庫版345ページで、『八月十日』という章の中の1ページでした。太平洋戦争で従軍し、フィリピンのミンドロ島で捕虜になり、レイテ島の収容所に入っていた主人公が、昭和20年8月10日に、米兵から日本がポツダム宣言を受諾することを知り、身近な俘虜としばらく会話した後、ひとりになって静かに涙を流す場面でした。
「 では祖国は敗けてしまったのだ。偉大であった明治の先人達の仕事を、三代目が台無しにしてしまったのである。 ・・・ あの狂人共がもういない日本ではすべてが合理的に、望めれば民主的に行われるだろうが、我々は何事につけ、小さく小さくなるであろう。偉大、豪壮、崇高等の形容詞は我々とは縁がなくなるであろう。」
続く文も引用したいのですが、長くなるのでやめます。主人公は、明治十年代の偉人達の労苦を思えば、その後の拡大した領土やそれに伴う繁栄を失っても、出直すことはできるはず、と考えます。
この文の初出は、昭和25年、大岡昇平は、明治42年(1909年)生まれで、戦前は会社員でしたが、「俘虜記」を書いた後、作家になりました。作品は小説ですが、実体験に基づいています。後年、「レイテ戦記」を書いたのも、捕虜収容所で在レイテ陸軍十六師団(京都・三重)やレイテ沖海戦に参加した西村艦隊(戦艦山城扶桑基幹)の生存者と一緒になったことが主な動機だったようです。
この本を買ったのは、たぶん十数年前です。私が戦史に興味を持っていることを知った知人から、「レイテ戦記」を勧められ、上中下3冊を読み終わったあとのことだと思います。
I found a copy of "Taken Captive: A Japanese POW's Story" by Shohei Ooka in my bookshelf. There was a bookmark on the page that described what happend and what the autor thought on August 10, 1945, in the prisoner's detention camp in Leyte Island, the Philippines. I read the book more than ten years ago.
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