A氏との対話 -JARL社員総会(第1回)が終わって-
友人A氏と管理人Jの対話です。
(A)近頃は例のアマチュア無線、まだしてるの?
(J)ぽちぽちしている。JARLっていう同好者の団体にも入ってるよ。
(A)じゃあ、社員なんだ。
(J)社員じゃなくて、会員だよ。社員は、選挙に通った140人弱の人だけだ。
(A)でも、たしか社団法人は社員が作るって聞いたから、社員かと思った。
(J)制度が変わるまでは、「会員」が法律上の「社員」だったらしいけど、去年、公益法人改革で、「一般社団法人」に変わって、新しくJARLにも「社員」ができて、「会員」は、法律には一言も出てこない、社員に立候補したり、社員を選挙したりするだけの人になったみたいだ。
(A)それじゃあ、社団法人に「入っている」とはいえないじゃない。
(J)定款があって、社員より前に会員のことが書いてあるし、やっぱり入ってるんじゃないかなあ。たぶん、弁護士とかは、それは「入っている」という言葉の定義の問題で、そんなあいまいな言葉は我々は使わない、ていうんじゃないの。
(A)なんだか分かりにくいなあ。
(J)そうだよね。社員総会が最高決定機関だったのが、社員が多いとガバナンスが利かないとか、いろいろあって、社員の過半数が実際に出席しないと議決できないことになったみたいだ。6万人余の会員がいるJARLでは、これは不可能だから、社員を全国から集まれる程度の140人以下に絞ることに決めて、会員の選挙で社員を決める代議制になったんだ。
(A)それじゃあ、国会みたいに役員は社員から選挙するんだね。
(J)違う。JARLでは、理事の候補者を会員が前と同じように選挙で選ぶ。社員がその候補について、選任するか、否認するか決めることになってるんだ。だから、会員の意向が役員人事に反映されると思ったんだ。
(A)どうして過去形なの。それにちょっと変だなあ。社員総会が最高決定機関なのに、理事会と社員総会の意見が違って、「ねじれ国会」みたいになったら困るんじゃない? 衆参のねじれどころか、国会と内閣がねじれたらうまく動くと思えないよ。
(J)実は、それで、最初からゴタゴタしてるんだ。選挙で選ばれた15人の候補のうち、4人も否認されちゃったんだ。
(A)社団に入ってるのか入ってないのか分からないような「会員」が、役員候補を選挙するなんて、もしかしたら、新しい仕組みを飲み込みやすくするためのオブラートだったんじゃないの。
(J)うーーん。そうだったのかなあ。ちょうど悪いことに、新法人に移行するときに、いわゆる改革派のZグループと従来路線キープ主義の人たちで、主導権争いが起こってて、冷静な議論や丁寧な説明がなかったみたいだ。誰が社員になっても役員人事にはあまり関係ないと思ったんだけど、社員の人たちをロボットみたいに考えたのは失礼だったかなあ。
(A)それに、新しい制度で歯車が回り始めるから、候補選挙の結果の尊重とか、精神論では限界があるんじゃない?
(J)そうかも知れない。たしかに、法律では、理事は社員総会が選任することになってるから、少なくとも新しい理事が選ばれてしばらくは、理事会と社員総会の路線が違うような「ねじれ」は起こらないはずなのに、候補選挙を尊重したら「ねじれ」でスムースな運営ができなくなっちゃうかもね。でも会員のための団体なんだから、会員のことは忘れないで慎重にやってほしいね。
(A)それにしても、同じ会員から選挙されたのに、4人も理事候補が否認されるなんて、社員総会の路線と理事候補者当選者の路線・主張が違って、会員と社員総会がねじれているみたいなのもちょっと変じゃない?
(J)選ぶ仕組みがだいぶん違うんだ。新しく決まった社員選挙の仕組みは、移行のときにもだいぶん問題にはなったけど、ほとんど前執行部の多数派、いわゆる体制派の提案のとおり、最後の会員総会で承認された。
(A)もとは会員総会が最高機関で、1人1票だったんなら、選挙区別に、例えば会員500人に社員1人とかの定数を割り振れば簡単じゃない。
(J)僕もそう思って、案が出てコメントが募集されたときに、いちおう意見を出したんだ。特に、住んでいる関東・山梨ブロック、無線でいう1(ワン)エリアは、アマ無線局が多くて、会員も多いんだけど、地方別の選挙区の比較すると、票の重みがいちばん重い地方に比べると、3分の1以下に軽くなっているので、納得できなかった。
(A)なるほど。国会と同じようなことがあるんだなあ。説明はあったの?
(J)意見に対しては、回答は何もなかったと思う。移行前にあった評議員の地方別の定数を4倍したということだけど、評議員と社員では、役目の重さが全然違うのに。説明は、会員数比例にすると、1エリアばかりが多い社員総会になってしまう、という程度のものしか聞いてない。
ここは、Zグループも相当がんばったらしいけれど、最初の定数案に1エリアだけ4人を上積みする妥協案が出て、それでZグループも降りてしまったんだ。それで、格差はほんの少し縮まっただけだ。
(A)そうか。じゃあだいたい衆議院のブロック別みたいになってるんだ。
(J)比例名簿でなくて、定数4から20までの10選挙区での単記選挙で、合計84人だけど、まあ近いかも。それに、区割りはそうかも知れないけど、さっきいった定数のアンバランスがひどい。僕いる1エリアでは、1人、何回か交信したことがあって、ボランティアもしている人が目に留まったので、投票したら、なにしろ競争率が倍くらいなので、あえなく落選してしまった。会員数に比べて定数の多いある地方では、立った人のうち、1人しか落選しなかったのに。
(A)じゃあ定数是正運動をしたら。
(J)国会と同じだけど、定数も社員総会が承認しないと変えられないらしい。1票が重い地方の社員の説得がたいへんだけど、何かできないかと今思案中だ。
(J)それにもう一つ、別の選挙区グループがあって、これがまたいろいろ論議があるんだ。各都府県ごとと北海道の支庁単位に支部があって、その支部が選挙区で、各支部1人ずつ、54人が選ばれる。
(A)小選挙区制の分もあるんだな。選挙区によって、会員数にずいぶん差がありそうだね。
(J)その問題もあるけど、そこで選ばれた社員は、支部長を兼ねることになっているんだ。改革派や評論家は、これは体制派が体制を温存するための仕掛けだといって批判している。支部長は、支部の事業などで、かなり時間をとられるので、希望者が少ないらしく、社員の仕事だけしようという人は、立候補しない。去年の秋の最初の選挙では、大阪しか選挙がなかった。それに、支部に影響がある統合とか事業費の節減とかの路線が取りにくくなるといわれている。
(A)でも、ボランティア精神のある人たちなんじゃないの。
(J)実態はあまり知らないけど、そう思う。だから、僕もはじめは評論家にほぼ同感だったんだけど、良く考えてみたら、ちょっと変ってきた。JARLは、QSLカードの転送だけしてくれればそれで十分という会員が多くて、僕も相当にそれに近いけど、一般社会に社団法人として認めてもらうためには、それなりの事業をしてなければならない。全国団体というなら、地方での足腰の強さ、草の根の活動もないとさびしい。だから、社員の一部をそういう人たちにするというのは、一つの考え方かも知れないと思いはじめた。
(A)選挙が1つだけとはちょっと極端だな。競争が激しくないのなら、改革派もそういうところにどんどん立候補すればいいんだ。
(J)そうだな。でも、たぶんそんなに簡単には行かない。支部長として地域の会員が認めるには、それまでに地域のクラブでの活動とか支部のイベントへの参加とをかしていて、ある程度顔を知られていないと難しいかもしれない。現職が、代わりたい人がいるならもう譲るといわない限り、現職有利だろう。今のZグループには、例外もあるけど、外国との交信には熱心で、電波はすごく良く飛ぶ、でも同好グループ外の地元の地域のことにはそれほど興味がない人が多いみたいだ。
(A)でも、新制度では、一般社団法人になったんで、公益社団法人じゃないんだから、利益の分配さえしなければ草の根活動なんてどうでもいいんじゃないの。
(J)公益社団法人は、敷居が高すぎて、なりたくてもなれなんじゃないか。でも、ある程度は公益的な事業もしているほうが世間の評価が違うし、定款にも災害時の非常通信とか、役に立つことをするように書いてある。純粋に無線で遊んでいるだけだったら、ハムに割り当てられた無線の周波数を減らせとかいわれても抵抗できないかも知れないし、Zグループがいっている、もっと簡単な免許制度への改正なんかも、説得力がないだろう。イギリスの団体は、エジンバラ公フィリップ殿下に名誉総裁みたいなパトロンというものになっていただいているらしいけど、やっぱり、地域の活動とかして社会の役に立っていることを認められているんだろう。
(A)ご高説は分かったけど、自分では地域で何かしてるの?
(J)そういわれると、耳が痛い。だいぶん前にしばらく小さい地元のクラブで代表をしたことはあるんだ。でも、なぜ入ったかというと、ハムがたくさんいたころに、地元の自治体が文化会館みたいなのの中に無線室を作って、住民や職場、学校のある人が使えたんだ。屋上に鉄塔も立ってた。長いお休みから復活して、また無線をはじめたんだけど、集合住宅住まいで、自宅では限界があったんで、その無線室で無線をやってみたいがために入ったんだ。入ってみたら、休眠中の幽霊団体で、無線機やアンテナもほとんど使い物にならない状態だった。そこで、会員を勧誘したり、小さいイベントを計画したりして、陳情して無線機やアンテナを買ってもらった。
(A)なんだ、それじゃあボランティアとはいえないね。
(J)そのとおり。無線室は、自治体にお金がなくなり、使う人も少ないので、もう廃止になってしまったけど、仲間ができたので、月に一度のクラブのミーティングにはだいたい出てる。このクラブでは、最近は、年に一度、秋の日曜に開かれる野球グランドにSLが走ったり、学校バンドの演奏があったりする地域のお祭りイベントに参加して、公開運用をするほかに、あるメンバーの提案で、ささやかな子供向けラジオ製作教室みたいなのをやってる。もっとも僕は、アンテナを立てたり、無線機で交信したりで、材料を準備したり、子供にハンダごての使い方なんかを教えるのは、ほかのメンバーなんだ。
(A)それはともかく、JARLの社員を会員選挙で選んだんだから、社員のことはだいたい分かってるんだよね。
(J)それが、去年の9月の選挙では、立候補者の氏名とコールサインを知らせてきただけなんだ。いくらなんでもそれじゃあ分からないよね。20人に満たない役員候補の選挙でもお金がかかるのに、200人近い立候補者の経歴・意見を載せた公報を作って配るには費用がかかり過ぎるという理由らしい。
(A)大きな会場を借り上げる会員総会はもうやらなくていいんでしょ。
(J)そのとおりで、会員総会にかけていたお金と社員総会にかかるお金の差はけちけちしないで出せばいいと思うけど、財政難だから出さなかったのかな。まあ、今度のことで、大勢の会員が苦情をいっているので、次はもう少しなんとかするんじゃないの(*)。アメリカの連盟では、地方ごとに理事を選挙しているけれど、メールでの投票もできるようになってるらしい。ITのことは分からないけれど、費用の節約方法はあるんじゃないかなあ。
(A)それにしても、趣味のことで、法律を見たりしているみたいだけど、ご苦労様だな。
(J)うん、調べたりしても、何の得にもならないからなあ。それに、自分も含めて、無線のことになると、見かけは大人でも中身は高校生ぐらいの人が多いから、聞いてくれる人もあまりないだろう。でも、今は割りに暇になったので、ボケ防止には良いのかもしれない。
(A)高校生か。でも高校生の気持ちになれるなら、むしろいいじゃない。だからこのIT時代に、いい歳をしていつまでも止めないんだな。
(J)・・・
(*)社員選挙で理事候補選挙と同様に選挙公報を配るには、そのことを想定していない選挙規定第8条第1項の規定の改正が必要。JARLホームページへの自己紹介掲載など、より簡便な方法もあるのではないか。
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